国際シンポジウム

◆住みかた革命−世界都市(コスモポリス)の構築◆

(開催主旨)

 人類は、約5000年ほど前から、「都市」というシステムをつくりはじめました。古代においては、都市そのものの数も少なく、そのあるものは、時代のうつりかわりとともに放棄され、あるいは、戦乱によって破壊されて廃墟となっていき、ある時期には、都市生活を否定する思想もうまれましたが、「都市」という装置とシステムそのものは、人類社会から消え去る事なく、ますます地球上の各地域に数をふやし、その規模も拡大し、機能と構造を発展させていきました。

 すでに、近世半ばには、江戸やロンドンのように人口100万に達する大都市が出現し、20世紀後半の現在、さらにその5倍の人口を要する500万以上の都市が各地に誕生しつつあります。−今世紀末には、全世界において60以上の500万都市が生まれるという国連の予測もあります。

 産業革命以後、約2世紀の間、人類世界は「近代国家」の時代だったといえるでしょう。現在では100以上の大小の国民国家が、地球上の陸地を「領土」に分割、管理しています。しかし、全世界の60億の人々の7割が、「都市」という高度に人工的な装置・システムとその世界的なネットワークの中に住むようになるという21世紀は、まさに人類文明はじまって以来の「都市の世紀」といえるのではないでしょうか?

 そういう認識の上にたって、日本未来学会の1985年度研究集会実行委員会は。今年度のテーマを「住みかた革命−世界都市の構築」ときめました。高度な技術と巨大なシステムに支えられた現代の都市は、すでに古代都市や近代以前の伝統的都市とちがった複雑な集団生活の「装置」です。21世紀には、この装置は、これまでの陸上をはなれて、海洋に宇宙に進出し、すべての都市が、高度な情報通信、交通流通システムでむすばれ、これまでの「国家間システム」とはまた次元の違った「世界都市ネットワーク」を形成していくでしょう。しかも、一方では、古代以来の、都市のルール、マナー、美学、モラル、生活の哀歓など「都市の魂」の問題は、なおこの時代にも生きつづけると思います。−私たちは、きたるべき「都市の世紀」の、「世界都市」のあり方について、新しい技術的可能性や国家間の次元をこえるシステムの展望を、海外からのスピーカー、パネリストの参加のもと2日にわたって多面的に検討を加えたいと思います。

  ・ 日時  1985年8月29日(木)、30日(金)

  ・ 会場  経団連会館 国際会議場 他

  ・ 主催  日本未来学会

  ・ 後援  読売新聞社、国際交流基金

◇プログラム◇

 (総合司会) 岸田 純之助

8月29日(木)

   9:30       開会挨拶  林  雄二郎

  10:15〜11:00  基調講演

             「住みかた革命」 

              菊竹 清訓

  11:05〜12:15  記念講演A

             「海洋社会の未来−その都市と集落」

              ジョン・P・クレーバン (ハワイ大教授)

             (昼食)

  13:30〜15:30  分科会  A−1  B−1  C−1

             (休憩)

  15:45〜17:00  分科会  A−1  B−1  C−1

  17:30〜19:30  懇親会

8月30日(金)

   9:30〜12:30  分科会  A−2  B−2  C−2

             (昼食)

  13:30〜14:30  記念講演B

             「未来学に対するひとつの見方」

              査汝強 (中国未来研究会副理事長)

             (休憩)

  14:45〜17:15  総合セッション

             (コーディネーター) 白根 禮吉

             (パネリスト) 菊竹 清訓

                     小松 左京

                     香山 健一

                     栄久庵 憲司

  17:20〜17:30  閉会挨拶

(分科会の概要)

分科会A 文明の風景 (コーディネーター:小松 左京)

  A−1 「1000万都市」

        上田  篤  (大阪大学教授)

        樋口 敬二 (名古屋大学教授)

        コメンテーター:桑木  務  (中央大学名誉教授)

  A−2 「人工都市の可能性」

        寺井 清英 (NTT特別参与)

        大林 辰蔵 (文部省宇宙科学研究所主幹教授)

        白根 禮吉 (電気通信科学財団理事長)

        コメンテーター:山下  勇  (日本造船工業会 相談役)

                月尾 嘉男 (名古屋大学助教授)

分科会B システムの風景 (コーディネーター:香山 健一)

  B−1 「生命と環境」−部分と全体の新しい関係を求めて−

        中村 桂子 (三菱化成生命科学研究所 人間自然研究部長)

        小林  登  (国立小児病院小児医療研究センター長)

        宮脇  昭  (横浜国立大学教授)

  B−2 「都市と社会」−多様なシステムの共存の新しいモデルを求めて−

        槇  文彦  (東京大学教授)

        石井 威望 (東京大学教授)

        公文 俊平 (東京大学教授)

分科会C 心の風景 (コーディネーター:栄久庵 憲司)

  C−1 「ものとこころ」

        岩田 慶治 (大谷大学教授)

        加藤 一郎 (早稲田大学教授)

        吉田 夏彦 (東京工業大学教授)

        角野 栄子 (童話作家)

  C−2 「こころの未来」

        手塚 治虫 (漫画家)

        広中 平祐 (京都大学教授)

        杉浦 康平 (グラフィック・デザイナー)


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